不動産売買・資産管理

再開発と権利変換処分等

~都市再開発法に基づく法定再開発の流れ~

1.相談の背景

顧問先より、

「再開発準備組合から書面が届いたのですが、今後どのような流れで手続は進むのでしょうか。」

との質問を受けました。

都市再開発法に基づく再開発は、いわゆる「法定再開発」と呼ばれるものであり、民間事業者主導で行われる任意の再開発(いわゆる「民間再開発」)とは、法的仕組み・権利関係の処理方法が全く異なります。
法定再開発は、都市計画法や都市再開発法に基づく行政主導のまちづくり手続であり、公共性・強制力を有する点が最大の特徴です。

2.法定再開発と民間再開発の違い

最大の違いは、法定再開発では行政処分によって強制的に権利移転や明渡しが行われる点にあります。
したがって、都市再開発法に基づく手続が進行し、最終的に「権利変換処分」や「明渡請求」がなされた場合には、当事者の意思にかかわらず立退きを行わなければなりません。

一方、民間再開発では、地権者全員の同意を得て契約により再開発を進めるのが原則であり、同意しない者がいれば事業自体が成立しません。この強制力の有無が、両者を分ける最も重要なポイントです。

3.再開発準備組合とは

「再開発準備組合」とは、市街地再開発組合(法人格を有する正式な組織)設立前の任意的な前身組織をいいます。
準備組合は、施行予定地区内の地権者(土地所有者・借地権者など)に対して加入を呼びかけ、行政(市区町村)と協議を重ねながら再開発計画を具体化していきます。

その際の目標は、地権者数および敷地面積のいずれも概ね80%程度(法的には3分の2以上)の同意を得ることです。
準備組合段階では任意加入ですが、同意率が一定水準に達すると、都市再開発法に基づく正式な「市街地再開発組合」を設立できるようになります。

4.未同意者がいても進む手続

再開発組合の設立要件を満たすと、都道府県知事の認可を経て正式な「再開発組合」が設立されます。この時点で、施行区域内のすべての地権者は法の定めにより当然に組合員となり(強制加入)、個別に不同意を表明しても事業は進行します。

したがって、少数の未同意者がいても手続は止まりません。これが「公共性の高い事業」として位置付けられる理由でもあります。もっとも、再開発組合設立に先立ち、行政は関係権利者に対して意見聴取や説明会を行うことが義務付けられており、透明性の確保も重要な要素となっています。

5.権利変換計画と権利変換処分

再開発組合設立後、最も重要な段階が「権利変換計画」の策定です。
権利変換とは、従前の土地・建物の所有権や借地権等を、新しく建設される再開発ビルの区分所有権などに行政処分によって置き換える制度です(都市再開発法第103条以下)。

(1)権利変換処分の意味

権利変換処分が告示されると、従前の土地・建物の権利は消滅し、再開発後の建物における新たな権利(新床)に自動的に移行します。これにより、権利関係の整理が一括して行われるため、民間では不可能な大規模再開発が実現します。

(2)評価の基準

この際、各地権者の「従前資産の評価額」と「新たに取得する建物部分の評価額」を比較して調整が行われます。評価には、不動産鑑定士の鑑定が用いられ、公共性と公平性の観点から慎重に算定されます。

6.権利変換後の対応と選択肢

(1)地権者が転出を希望する場合

再開発後の新しい建物の一部を取得せずに転出を希望する地権者は、「金銭給付の申出」を行うことができます。この場合、従前資産の評価額に応じた補償金を受け取って退去することになります。

(2)借家人の取扱い

借家人は、原則として従前の貸主(地権者)が取得する新しい建物部分に入居する形で権利関係を引き継ぎます。
ただし、地権者が転出を選択した場合や、再開発後の建物に賃貸部分が設けられない場合には、再開発組合が新たに用意する賃貸部分への入居が案内されます。

この際、従前と同等の生活再建が図られるよう、移転費や仮住居費などの補償措置が講じられるのが通例です。

7.借家条件と賃料の決定

再開発後の新しい建物は、設備・立地・利便性が向上するため、一般的に賃料が上昇する傾向にあります。再入居にあたり、借家条件について合意が得られない場合には、次の手順で調整が行われます。

1、再開発組合の審査委員会において、過半数の同意により裁定を実施。

2、それでも合意が成立しない場合には、裁判所において賃料・敷金等を確定。

このように、法定再開発では借家条件についても法的な調整手段が用意されています。

8.まとめ

以上が、法定再開発における再開発準備組合から権利変換処分までの基本的な流れです。

  • 法定再開発は行政処分に基づく強制的な制度であり、
  • 準備組合 → 再開発組合設立 → 権利変換計画 → 権利変換処分 → 明渡・入居
    という順に手続が進みます。

少数の不同意者がいても事業は進行しますので、対象区域内の地権者や借家人にとっては、早い段階から自己の権利内容・補償条件・評価額の見通しを確認しておくことが極めて重要です。
また、再開発後の生活再建を見据え、仮住まいの確保や資金計画の準備を同時に進めておくことが実務上のポイントとなります。

事例紹介カテゴリー
賃貸借契約・予防法務不動産売買・資産管理