2024.04.30

区分所有と競売請求


先日、顧問先より、

「管理費等を滞納している区分所有者がいるのですが、どのように回収したらよいでしょうか

との質問を受けました。

まず、区分所有マンション等において、管理費等を長期かつ多額に滞納する区分所有者がいることは珍しくありません。
このような区分所有者は、強制執行できるような財産を有しないことが多く、その所有マンションについてもオーバーローンになっていることも多いです。

そのため、所有マンション等について強制執行を行ったとしても(区分所有法7条)、無剰余取消がなされてしまう可能性が高いです(民事執行法63条2項)。
無剰余取消の趣旨は、強制競売したとしても回収できる部分がなく、公権力を用いて執行しても無益である点にあります。

しかし、そうしますと管理費等の滞納は日々拡大してしまい、それを放置せざるを得ないことになってしまいます。
そこで、滞納管理費を回収できるか否かにかかわらず、区分所有の管理の観点から、競売を認める手続があります(区分所有法59条)。

区分所有法59条に基づく競売(以下「59条競売」といいます)の要件は、簡単に整理しますと、

①区分所有者の共同利益に反する行為によって区分所有者の共同生活上の障害が著しいこと
②他の方法では共同生活の維持が困難であること

です。
この点、管理費の長期滞納があれば①を満たすものと考えられますが、②については満たさないものとして裁判所より棄却判決を受けることもあります。
例えば、債権執行の余地がないかが明らかでなく、また、被告が分割弁済の和解を希望している場合に和解の中で管理費等を回収する途を模索することが考えられるとして請求を棄却した裁判例があります(東京地裁平成18年6月27日)。

59条競売は滞納管理費等を回収するための手続ではなく、競売代金は、管理組合が裁判所に納めた予納金の返還や抵当権者への配当に充てられるため、直ちに競売代金から管理費等の回収を図ることはできない点に注意が必要です。
そのため、滞納管理費等は、新しい区分所有者(競落人)より回収することになります(区分所有法8条)。

上記の通り、区分所有マンション等における滞納は頻発するにもかかわらず、その対応は法的にも複雑であり、一つ一つ適切な判断をすることが必要となります。
少しでもご参考になりましたら幸いです。

弁護士 鈴木 謙吾

弁護士 鈴木 謙吾

東京弁護士会

この記事の執筆者:弁護士 鈴木 謙吾

慶應義塾大学法学部卒。2005年に鈴木謙吾法律事務所を開設後、不動産関連の相談を多く受け持つ。 現在は50社以上の顧問先を抱え、慶應義塾大学法科大学院の非常勤教員を10年以上務めたほか、上場企業の社外取締役監査等委員としての業務も兼任している。

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