2007.08.07

老朽化した賃貸物件の修繕費用

阪神大震災を教訓にして、平成7年にいわゆる耐震改修促進法が制定され、各都道府県及び特定不動産の所有者は、耐震診断を実施し、当該建物の改修に努めるよう求められています。

しかし、特に賃貸物件の場合、そのために必要とされる改修費用を負担するのは誰かという点が問題になることが多くございます。

そもそも民法606条では、

「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」

とされているため、賃貸人が費用を負担することが原則になります。

しかし、老朽化した建物は賃料が低額であること等から、賃貸人が改修費用を全額負担することが困難な場合も想定されます。

この点、賃貸借契約において費用負担等に関する特約を設けることができます。

そして、屋根・壁・柱・土台等建物の主体部分については賃貸人が負担すべきとされていますが、特約に基づき一部費用の賃借人負担が認められる場合もございます(東京地方裁判所・平成3年5月29日判決)。

このように、建物の維持管理のため必要な範囲で特約を設置することで、老朽化した建物の修繕・改修に掛かる多額の費用の問題をクリアするとともに、建物の安全性を 担保することが可能になります。

従いまして、今後の賃貸借契約においては、上記特 約の設置を検討することをお勧め致します。

但し、賃借人に不利な条項については無効とされる場合がありますので、この点には十分な配慮が必要です。

弁護士 鈴木 謙吾

弁護士 鈴木 謙吾

東京弁護士会

この記事の執筆者:弁護士 鈴木 謙吾

慶應義塾大学法学部卒。2005年に鈴木謙吾法律事務所を開設後、不動産関連の相談を多く受け持つ。 現在は50社以上の顧問先を抱え、慶應義塾大学法科大学院の非常勤教員を10年以上務めたほか、上場企業の社外取締役監査等委員としての業務も兼任している。