先日、
「あるビルをテナントに貸しているのですが、どのような理由であっても修繕が必要になった場合には、貸主として修繕義務を負担しないといけないのでしょうか。」
という相談を受けました。
まず、民法606条1項では、「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。」と規定されています。
そのため、賃貸物件の修繕費用は賃貸人が負担することが大原則ですが、最判昭和29年6月25日は、修繕を賃借人の義務とする旨の特約も可能と判示しています。
また、最判平成17年12月16日においては、
「賃借人に特約によって修繕義務を負わせるためには、少なくとも賃借人が負担する範囲が契約書に具体的に明記されているか、賃貸人が口頭により説明し、賃借人が明確に認識して合意したなどの事情が必要」
とされています。
そのため、上記の事前合意又は契約書明記等の事情があれば、修繕費用について賃借人の義務とすることも可能と言えるでしょう。
別の視点ですが、2020年4月に施行予定の改正民法において、下記のような賃借人の修繕に関する権利が明記されている点に注意が必要です。
「賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、賃借人は、その修繕をすることができる。
- 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。
- 「急迫の事情があるとき。」(改正民法607条の2)
以上の点からして、近い将来の改正民法も見据えて、賃貸借契約の修繕義務について、貸主及び借主がどの範囲で役割分担するのか等、事前に明確な合意等をされることをお勧め致します。
なお、先日、不動産オーナーを対象とする講演においても、上記改正民法に関わる講義もさせて頂きましたので、ご興味があれば遠慮なく御連絡下さい。
弁護士 鈴木 謙吾
東京弁護士会
この記事の執筆者:弁護士 鈴木 謙吾
慶應義塾大学法学部卒。2005年に鈴木謙吾法律事務所を開設後、不動産関連の相談を多く受け持つ。 現在は50社以上の顧問先を抱え、慶應義塾大学法科大学院の非常勤教員を10年以上務めたほか、上場企業の社外取締役監査等委員としての業務も兼任している。


