2022.10.28

敷地の原状回復義務

先日、顧問先の社長より、

「庭付きの一戸建てを貸していて、先日退去されたのですが、庭の草が伸び放題になっていました。庭の修繕費用まで請求できるのでしょうか。」

との質問を受けました。

賃貸借契約が終了し、賃借人が明渡す際には、原状回復義務を履行する必要があります。
「原状回復義務」とは、賃借物について、賃貸借契約締結当時の状態に戻す義務をいいます。

本件では、主として建物を賃貸する契約でしたので、「庭」についても賃借物の対象に含まれるのかについて争点になります。
その上で、庭の草についても、適切に管理すべき法的義務の存否についても問題になり得ます。

この点、東京簡裁平成21年5月8日では、下記のように判断し、基本的には庭に関する善管注意義務を認めています。

・賃貸借契約書において、庭の植栽等に関する記載がなかったとしても、庭付き一戸建ての賃貸借の場合は、当事者の合理的意思解釈により、庭及びその植栽等も建物と一体として賃貸借の目的物に含まれる。

→そのため、被告らは本件賃貸物件の敷地・庭の植栽についても、信義則上、一定の善管注意義務を負うと解するのが相当である。


・被告らの入居前と退去後の庭の草の状況を比較すると、退去後は明らかに草が生い茂っている状態であり、・・・一般的な庭の管理として行われるべき定期的な草取りが適切に行われていなかったものと推察される。

→よって、この点は被告らの善管注意義務違反とみるのが相当である。

但し、上記事例において、裁判所は、原告が庭の修繕費用として請求していた全額を認めたのではなく、敷金の半額程度を認めるに留まった点には注意が必要です。
賃借人において、庭を適切に管理する義務を負うものの、修繕費用としては、実際に負担した費用ではなく妥当な範囲で認められることになりそうです。
敷地の原状回復義務等について、少しでもご参考になりましたら幸いです。

弁護士 鈴木 謙吾

弁護士 鈴木 謙吾

東京弁護士会

この記事の執筆者:弁護士 鈴木 謙吾

慶應義塾大学法学部卒。2005年に鈴木謙吾法律事務所を開設後、不動産関連の相談を多く受け持つ。 現在は50社以上の顧問先を抱え、慶應義塾大学法科大学院の非常勤教員を10年以上務めたほか、上場企業の社外取締役監査等委員としての業務も兼任している。